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マスティフ犬

イギリスのバーミンガムで、世界最大のドッグショー クラフツ(Crufts)が開催されたという記事

が目に止まりました。

今回、最優秀賞になったのは真っ白いウエスト・ハイランド・ホワイトテリアで、いかにも愛玩犬

という美形のイヌでした。 イギリスでは従来から犬と人間の関係が深く、動物愛護の運動も盛

んなようです。

 

このたび発行した新刊 『ラブと友たち―手術に立ち会ったイヌ』 は、スコットランドのエディン

バラでの実話を元に書かれた短編です。当時は興行としての闘犬もあったようですが、この

話は仔イヌ時代のラブ(Rab)についての挿入のあと、ストリートで出くわしたイヌ同士の闘犬

の模様から始まります。

 

同じテリアでも、ラブに咬み付いたのは白いブル・テリアで卵型の顔で精悍な闘犬にもなる

イヌです。

主人公(犬)のラブはマスティフ犬という軍用犬、狩猟犬、番犬などの役割をする大型犬で、

日本ではあまり飼育されていません。

 

そこで試しにドッグショーのそれ以外の写真を見てみると、なんとマスティフ犬がいました ! 

ボルドー・マスティフという犬種で茶色いイヌでした。ラブはグレーがかった花崗岩のような

毛並みですが、顔つきは挿絵のラブとそっくりでした。

 

仔イヌ時代のラブは「仔牛みたい」と表現されており、飼主を助けながら共に生活します。

忠実で愛情深く威厳のあったラブは、飼主の診察にも手術の場にも同行します。なぜイヌ

が手術の場に居てよかったか? ―― この手術が行われた19世紀前半には、細菌による

感染の概念が無かったからです。したがって手術が成功しても術後の感染症という脅威が

あり、このあと間もなく実用化された消毒法と麻酔下手術で、外科は飛躍的に発展したと

いわれます。